• 2009-05-17 08:50:26
  • 見えない?無数?においの世界
3月22日のブログ「春の香りを聞く」では、香りの効果、聞香や香りを取り入れた商品などを取り上げて、香りを聞くことのススメをご紹介しました。
今回は、香りを含めた「におい」全般と私たちとの関係についてのお話をしたいと思います。

* * * * * *

■においは脳で感じるもの
空気中には草花などの自然物や食べ物、薬品のにおいなど、色々なにおいが漂っています。
におい物質の種類は今や約40万もあると言われていて、私たちは約10万種類に嗅ぎ分ける力を持っているそうです。
そもそもにおいを感じるのは、鼻の奥にある嗅細胞が働いているから。
嗅細胞に空気中のにおい物質がたどり着くと、その情報は電気信号に変換されます。
そして、その電気信号は嗅神経から嗅球を経て大脳辺緑系に伝わっていきます。
私たちがにおいを嗅ぎ分けることは、嗅細胞で受けたにおいを脳で感じ分けているということです。
においから色々な記憶や感情が引き起こされるのも、脳の働きが深く関与しているからなのですね。
意識にのぼるのはほんの一部かもしれませんが、私たちは様々なにおいを脳に送り続けながら普段の生活を過ごしているのです。

■においの役割
どこからか良い香りが漂ってくると近くで花が咲いているのかな、なんて思ったり、ガスなどのにおいを嗅ぐとどこかで漏れていないか心配になったりすることはありませんか?
「春の香りを聞く」でもお伝えしましたが、においの役割のひとつには危険などを察知するレーダー機能があります。
においは遠受容性感覚と呼ばれていて、そのにおいを出すものから離れていても感じることができるのが特徴です。
たとえば、完熟した果実には「甘い香りがする」とか、腐敗した食べ物には「刺すようなにおい」というような表現をすることがありますよね。
本当は「甘い」は味覚で「刺す」は触覚。
直接にものに味わったり触れたりして感覚を得る近受容性感覚で使われる表現から、においはことばを借りることが多いのです。
それは、遠受容性感覚である嗅覚が近受容性感覚の代理として、食べたり触れたりする前に、あらかじめそれが体にとって良いものかそうでないか予想することができることと深い関係があります。
においは真っ先に毒などの危険を事前に教えてくれる、というわけです。

また、においは見た目とも密接なつながりを持っています。
たとえば、香水をつけて出かけるとき。
爽やかな香りには涼しげなブルー系、華やかな香りには女性らしいピンク系、など…香水の香りの種類に合わせて、身につける服やアクセサリーの色を使い分けてはいないでしょうか?
私たちはにおいと色をデタラメではない方法で選び取る能力を持っています。
においの種類は赤や青といった色相の違いとして、匂いの強さは暗明の違いとして表現されるという研究結果もあります。
においを通して色々な感覚を一緒に体験することは、生きていく知恵でもあり、楽しみでもあるのでしょう。

■日本人のにおいの世界
世の中にほとんど無数に存在しているにおいの種類。
においの体系や分類の基礎となるのは、私たちが過ごしてきた成育環境や食習慣などに影響されていると言われています。
においの種類は文化的、時代的影響を反映しているので普遍的なものとはなりにくいようです。
たとえば、ワカメや納豆のにおいは日本人にはお馴染みの食品。
これがないと朝が始まらない!というくらい欠かさず食べている人もいるのではないでしょうか。
でも、これらを食べる習慣がない人々にとっては、何のにおいなのかわからないのは想像できますよね。
実際、国際比較研究をしたところ、外国人はこれらのにおいが正しくわからなかったという報告が残っています。
同じように、お菓子やお料理に使われるアニスというスパイスは日本人にはあまり馴染みがないので、何なのか正確に判断できなかったという結果もあります。
それらのことから、生活の中に普遍的な匂いの分類があるというわけではなく、日本人には日本人としてのにおいの世界があると考えられます。

古くから自然観を大切にし、自然と調和しながら生きてきた日本人ではありますが、においから見てみると最近の関心は少し変化してきているのだそう。
実は、現代の日本人は花の香や果実の匂いの占める割合が小さく、食品や生活用品としての化学物質に関する匂いが大きい位置を占める傾向が高いことが明らかになってきました。
これは、私たちのにおいの世界を支える骨組みとして、「快—不快」、「刺激性」に加えて「安全、危険」の軸が大きくなってきたことを意味しているのだそうです。
においの認知傾向からも、食の安全や安心に対する高い関心が読み取れるのですね。

* * * * * *

目には見えないにおいは、独自のアプローチから私たちに色々な実態を教えてくれることがあります。
においに対して敏感になることで、またひとつ、新しい気づきが得られるかもしれません。

湯気.jpg

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