• 2008-09-30 23:59:10
  • 公共交通のデザイン
公共交通のデザイン
〜副都心線 渋谷駅 予感の設計〜

秋も本番になり、日中は外の空気に触れるのが気持ちいい時期になってきました。

最近は、街を歩くとバスや地下鉄、ベロタクシーや自転車など様々な公共交通が、より一層注目を集めるようになってきました。
一つは、できるだけ環境負荷を少なくしようという世の中の動きが、公共交通の利用促進の追い風となっていることが挙げられるようですが、それだけではないような感じがします。

バスや地下鉄といった公共交通にとって重要なこととは、誰にとっても安全で、便利で、簡単に利用できることが挙げられると考えられます。
でもさらに、そこに楽しそうなことに対する「予感」のようなものが加わるといいのでしょうね。
例えば、駅は視認性、誘目性、可読性、識別性に配慮して設計されています。つまり、誰でも簡単に理解できて、遠くからでも見やすいものであるように考えられていますが、それを踏まえた上で、魅力的なものに設計されていると、今度は感覚にうったえて「見たい」とか「知りたい」という気持ちにさせられるのでしょう。


そんな気分にさせてくれる公共交通はまだまだ少ないのですが、安藤忠雄氏によって設計され、今年の6月に開業した副都心線の駅は、そうしたことも含めてデザインされていることが見て取れます。


渋谷.jpg
これは渋谷駅 コンコースからホームを見下ろしている写真。

渋谷2.jpg
エントランス部の「卵の殻」。
反対側がエスカレーターへの出入り口になっています。乗り物や生き物の正面(顔)をイメージさせるモニュメントのようにも見えます。

渋谷3.jpg
ホームの壁。
金属のパネルが、蛍光灯の光を無機質に反射しています。

渋谷4.jpg
こちらはホームの天井。
無彩色と規則的な図形の連続性が、眼前に控えている「未来」を彷彿させます。

渋谷5.jpg
渋谷駅のサイン。
周辺のパネルの色は、他の素材と同様にグレー系の無彩色です。

渋谷駅は、「地宙船」をコンセプトにして設計されています。
「地宙船」とは地中に埋まっている宇宙船を示す造語だと解釈できます。
そして「地宙船」である卵形は、地域の中の駅、また循環型社会への中心的存在ということが意味されています。
たとえば、それは機械による換気に頼らない自然換気を用いることで、世界的課題の一つであるCO2排出量削減を実現していることからもうかがえます。
また、副都心線を示すブラウンや、点字ブロックの黄色などの色を除いて、
渋谷駅はほとんど無彩色で統一され、つまり色が「ない」状態です。
それは安全に関わる目立ちやすさを除き、一見すると地味だと感じるかもしれません。
しかしその代わり、色を感じさせない分だけ、ひとたび注意してみると素材や形に関心が向かいます。素材の色だけでなく、蛍光灯や太陽光などによる白と黒、明と暗のコントラストがくっきりと浮かび上がっています。
それらの細部にわたる微妙な違いを感じることができる空間だということは、とくにそこを日常的に利用する人々にとって、小さな楽しみの予感になるのかもしれません。

「地宙船」が表す、地下、宇宙、未来というメッセージ、
「卵形」が表す、始まり、中心、循環というメッセージを渋谷の象徴にすることで、
世界における、渋谷という街の存在感、もっと言えば渋谷のブランド力を日常的な利用者から世界の人々に向けて発信しているのだと考えられます。


渋谷駅は副都心線の始発駅でもあり終着駅です。
ここから15の駅へ続いているのですが、渋谷駅は、その中でももっとも強い「予感」のメッセージが込められた駅といえるでしょう。

他の駅のご紹介はまた別の機会に。




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